国立スポーツ科学センター(JISS)契約研究員として日本代表選手らの心理サポートを務める柄木田(からきだ)健太さん(33)が9月12日、大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科博士後期課程の修了式を迎え、博士号を取得しました。「時間がかかったが修了することができました。ずっと背中を押し続けてくれた先生のおかげです」と指導教員の土屋裕睦(ひろのぶ)教授(スポーツ心理学)に感謝しました。

大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科博士後期課程を修了した柄木田(からきだ)健太さん(左)と、指導教員の土屋裕睦教授(スポーツ心理学)

大阪体育大学はスポーツSDGsを推進しています
柄木田さんの専門分野は選手の緊張。博士論文の演題は「スポーツ場面におけるあがりの対処方略の検討-自己意識特性に着目して-」で、試合や競技中に過度な緊張やプレッシャーを感じ、本来のパフォーマンスを発揮できなくなる状態やその対処法について考察しました。
柄木田さんは近畿大学で心理学を学び、主にスポーツ選手がこれまで普通にできていた動作が突然できなくなる「イップス」を研究するため大体大大学院に進みました。高校生の時、弟がいた少年野球チームを指導した際にボールを思うように投げられない子どもを見たことがあり、「イップス」に強い関心を持っていたのだといいます。
2016年に博士前期課程を修了し、大学院研究生などを経て博士後期課程に進みました。一方で2022年からJISSのスポーツ医学研究部門心理グループの契約研究員として、日本代表選手らの心理サポートを務めています。昨年のパリオリンピックでは日本スポーツ振興センター(JSC)が設置したパリの村外サポート拠点にも常駐しました。
柄木田さんは「緊張」や「あがり」の研究の大きな特徴は、現場で実践できることだといいます。「日本代表クラスの選手でも緊張でうまくプレーできないと話す選手はいます。私たちには計り知れないプレッシャーを感じながら練習していて、そんな世界の話を選手から聞けるのはとてもいい経験になります」と話します。ある選手から「自分はイップスかもしれない」と相談を受けたこともありました。選手が実力を発揮する手助けになるよう、現場に還元できることを常に考えながら研究してきました。いろいろな研究結果を選手に伝え、選手から「これやってみたら良かったですよ」と声をかけてもらった時はとてもやりがいを感じるといいます。
また、JISS以外にも2021年から土屋教授を引き継ぐかたちで、プロ野球球団のメンタルサポートを務めています。
大学院では、オンラインで土屋研究室に参加して研究を続けました。
土屋教授は「JISSやプロ野球のサポートを務めながら、博士後期課程をやり切るのはすごいこと。一方で、命がけでスポーツに打ち込むトップアスリートをサポートする研究員は全力でアスリートに応えるべきで、博士号を取ることはすごく重要なことだ」と話します。
柄木田さんは「心理学は究めれば究めるほど人それぞれで分からなくなるが、その中で共通点を見いだすのが研究で、そこに楽しさがある。今後も研究に打ち込んでいきたい」と話しています。
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